年間100泊超のワーケーション歴5年が教える宿選びと装備の現実

公開: 2026年6月21日更新: 2026年7月5日旅ガジェット番長・リョウ
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著者の経験背景

2019年からフリーランスのWebディレクターとして活動を始め、以来5年間でワーケーションを延べ100泊以上経験してきました。北海道から沖縄まで国内各地を渡り歩き、直近ではタイやポルトガルでも仕事をしながら旅をしています。

最初の頃は「旅行しながら仕事ができれば最高」という安易な発想で動いていました。しかし現実はそう甘くなく、Wi-Fiが突然切れてクライアントとのビデオ会議が途中で落ちたり、コンセントの位置が悪くて充電しながらPCを使えなかったり、失敗の連続でした。

その試行錯誤の中で「何を準備すべきか」「どんな宿を選ぶべきか」についてのノウハウが少しずつ積み上がってきました。今回はその経験を、できるだけ具体的にお伝えします。


目次

ワーケーションの現状と広がり

ワーケーションという言葉が日本で本格的に広がったのは、コロナ禍以降のことです。総務省が2021年に公表した「テレワーク人口実態調査」では、テレワーク実施率が2020年以降に急伸したことが示されており、それに連動する形でワーケーション需要も拡大しています。

観光庁が公表しているデータでは、「休暇と仕事を組み合わせた旅行(ワーケーション)」に関心を持つ人の割合が、2021年から2023年にかけて継続的に上昇しています。特に20代・30代のビジネスパーソン層での関心度が高く、フリーランスだけでなく、企業に所属する会社員にもワーケーション制度が普及しつつあります。

一方、観光庁の旅行・観光消費動向調査(2026年版)では、ワーケーション利用者が宿泊先に求める要件として「安定したWi-Fi環境」「デスク・椅子の有無」「電源の確保」の3点が上位に挙げられています。これは実際に私が感じてきた不満とほぼ一致しています。

また、国土交通省の資料によると、地方自治体のワーケーション誘致施策は2022年度から急速に増加しており、補助金や無料体験プログラムを提供する自治体が全国で100を超えています。こうした行政支援の整備が、ワーケーションをより身近な選択肢にしていると言えます。

ただし、課題も残っています。宿泊施設の「ワーケーション対応」の品質にはばらつきが大きく、「仕事ができます」と謳っているにもかかわらず、Wi-Fiの速度が実用に耐えないケースや、デスクがあっても照明が暗すぎて長時間の作業に向かない宿も少なくありません。そのため、自分自身の選別眼と、装備による補完が欠かせない状況です。


最初のワーケーションで完全に失敗した話

2019年の秋、長野県の某温泉宿に1週間滞在して仕事をしようと計画しました。宿のWebサイトに「Wi-Fi完備」と書かれていたので疑わず予約したのですが、到着してPCを開いた瞬間に嫌な予感が走りました。

通信速度を測ってみると、下り2Mbps・上り0.8Mbpsという数値が出ました。Webブラウジングは一応できますが、ビデオ会議はほぼ不可能な速度です。その週の木曜日には大切なクライアントとのオンラインプレゼンが控えていました。

結局、宿から車で30分ほどの町のコワーキングスペースを急遽探し、日帰りで往復してプレゼンを乗り切りました。往復の交通費と、コワーキングスペースの利用料で予想外の出費が発生しました。せっかく温泉宿でのんびりしながら仕事をするはずが、移動と出費のストレスでかえって疲弊してしまいました。

この失敗から学んだことは二つあります。一つは「Wi-Fi完備」という表記は何の保証にもならないこと。宿に事前に電話して、実際の通信速度(可能であればMbps単位で)を確認するか、レビューサイトで「仕事した」「テレワークした」という口コミを探すことが不可欠です。

もう一つは、モバイル回線を必ずバックアップとして持つことです。この失敗以降、私はモバイルWi-Fiルーターを常時携帯しています。宿の回線が使えない時の保険として、これ以上に信頼できるものはありません。宿のWi-Fiはあくまで「あれば使う」程度に位置づけ、自前の回線を本命にするスタンスが精神的に安定します。


宿選びの基準が固まるまでの試行錯誤

長野の失敗以降、私は宿選びに関して独自の「チェックリスト」を作り始めました。最初は5項目だったものが、経験を重ねるうちに現在では20項目以上に増えています。

中でも最も重要視するようになったのが「デスクの高さと椅子の質」です。ホテルや旅館にあるデスクは、多くの場合「観光客が少し書き物をする」程度を想定した設計です。長時間の作業には向いておらず、腰や肩への負担が積み重なります。

2020年の夏、沖縄に10日間滞在した際、デスクはあるものの椅子がソファタイプで座面が低すぎる宿に泊まりました。最初の3日間はそれに気づかず使い続けた結果、4日目に腰痛が出始めました。残り6日間は痛みを抱えながら作業するという、非常に非効率な状況に陥りました。

この経験から、予約前に宿の部屋写真でデスク周りを必ず確認するようになりました。可能であれば宿に問い合わせて「PCで長時間作業する予定だが、デスクチェアはありますか」と直接聞くようにしています。こうした質問に丁寧に答えてくれる宿は、ワーケーションへの理解度も高い傾向があります。

また「遮光カーテンの有無」も重要な要素です。在宅勤務中は時間管理が乱れやすく、昼夜逆転を防ぐために光環境のコントロールが必要になる場面があります。特に夏場、朝4時頃から外が明るくなる地域では、遮光カーテンがないと睡眠の質が著しく落ちます。これも直接問い合わせるか、口コミで確認するのが確実です。


装備の最適化に3年かかった話

ワーケーションに何を持っていくかという「装備問題」は、5年経った今もまだ進化し続けています。最初の1年間は「とにかく多く持っていく」派で、スーツケースがいつも重くなりすぎて移動のたびに後悔していました。

2年目からは「削ぎ落とす」フェーズに入り、逆に必要なものまで省いてしまう失敗もしました。ある時、充電ケーブルをあえて1本だけにして出発したところ、3日目にケーブルが断線してPCの充電ができなくなるというトラブルが発生しました。予備を持つことの重要性を改めて痛感しました。

現在の私のパッキングの考え方は「最軽量・最小限・最高リダンダンシー(冗長性)」の三原則です。荷物は軽くコンパクトに、しかし仕事に関わる機材だけは必ず予備を持つというルールです。

具体的には、充電まわりは複数のポートを持つアイテムを1つにまとめることで、ケーブルの本数を減らしています。また衣類については圧縮収納を活用することで、スーツケースの中のスペースを機材用に確保するようにしています。

移動手段がバスや電車の場合、スーツケースを預けてしまうと機内でPCを使えなくなる場合もあるため、機内持ち込みサイズで全てを収めるか、必要な機材はすべてバックパックに入れて手元に置くかを事前に決めておくことが重要です。荷物の分け方ひとつで、移動中の生産性が大きく変わります。


海外ワーケーションで電力問題に直面した体験

2022年に初めて海外でのワーケーションを試みました。行き先はタイのチェンマイです。デジタルノマドが多く集まる都市として知られており、コワーキングスペースやWi-Fi環境は非常に充実しているという評判でした。

実際にWi-Fi環境やコワーキングスペースは期待通りで、仕事の効率自体はむしろ国内より高かったくらいです。問題は電力周りでした。宿のコンセントが日本の2ピンプラグとは形状が異なり、変換プラグを持参していなかったため、到着当日の夜はPCとスマートフォンの充電が一切できないという状態に陥りました。

翌朝、近くのショッピングモールで変換プラグを購入しましたが、現地で急いで買ったものは品質が不安定で、接触不良が何度か発生しました。仕事の合間に充電状況を何度も確認しなければならず、集中力が分散されました。

この経験以来、150カ国以上に対応したマルチ変換プラグを旅行準備の最優先アイテムに加えました。USB-Aポートが複数あるタイプを選ぶことで、変換プラグ1つでスマートフォンやモバイルバッテリーへの充電も同時に行えるようになり、荷物の点数も減りました。

海外ワーケーションにおいて電力の確保は、国内以上にシビアな問題です。宿を出て移動している間にデバイスが切れてしまうと、地図アプリも使えず、翻訳アプリも使えず、仕事の連絡も取れなくなります。モバイルバッテリーと変換プラグは「命綱」と言っても過言ではありません。


読者へのアドバイス

ワーケーションを成功させるための要素を一言で表すなら「環境の自前化」です。宿や施設が提供してくれるものを当てにしすぎず、最低限の仕事環境を自分で持ち込む準備をしておくことが、安定した生産性につながります。

宿選びの最優先事項はWi-Fi速度の事前確認です。 問い合わせても速度がわからない場合は、直近のレビューで「テレワーク」「仕事」「通信」などのキーワードを検索してみてください。実際に使った人の声が最も信頼できる情報源です。

デスク・椅子の環境は写真で必ず確認してください。 長時間の作業を想定した椅子があるかどうかが、滞在中の体調に直結します。この点を宿に直接確認するのも良い方法です。

装備は「削ぎ落とした上で冗長性を持たせる」が理想です。 衣類は圧縮収納で嵩を減らし、仕事道具のケーブルや変換プラグは予備を1つ必ず持つ。この考え方を身につけるだけで、移動のストレスと現地でのトラブルが大幅に減ります。

海外に行く場合は電力対策を最初に考えてください。 変換プラグとモバイルバッテリーは出発前に必ず確認・充電してから旅立つことを習慣にすると安心です。

最後に、ワーケーションは「旅行に仕事を持ち込む」のではなく「自分の仕事環境を移動させる」という発想の転換が重要です。その意識があれば、宿選びも装備選びも自然と正しい方向に向かっていきます。


よくある疑問

Q1. ワーケーションに向いている宿の種類はありますか?

一般的には、ゲストハウスやホステルよりも、ビジネスホテルや長期滞在向けのマンション型ホテル(サービスアパートメント)の方がワーケーションに向いていることが多いです。ビジネスホテルはデスクと椅子が標準装備のケースが多く、Wi-Fiも比較的安定しています。最近は「ワーケーション特化プラン」を設けている宿泊施設も増えており、そうしたプランを選ぶと仕事環境が整っていることが多いです。ただし料金が割高になる場合もあるため、長期滞在であれば民泊系サービスを組み合わせるのも選択肢の一つです。

Q2. 仕事の効率が落ちないか不安です。どう対策すればよいですか?

最大の敵は「環境の新しさによる集中力の分散」です。到着直後は特に注意が必要で、観光や散策の誘惑に負けて仕事時間が削られがちです。対策として、到着日は仕事を入れず「環境整備の日」と割り切るのが効果的です。仕事部屋の環境を確認し、通信速度を測定し、デスク周りを整えることで、翌日からフルで仕事に集中できます。また、タイムブロッキング(時間帯ごとに作業内容を決める手法)を事前に組んでおくと、旅先でも規律ある生産性を保ちやすくなります。

Q3. ワーケーションの費用はどう考えればよいですか?

ワーケーションは通常の旅行より宿泊費が割高になりやすく、その点を事前に把握しておくことが重要です。ただ、長期滞在割引を活用したり、繁忙シーズンを外したりすることで費用を抑えることも可能です。また、コワーキングスペースを毎日利用すると想定以上の費用がかかるため、宿のWi-Fi環境が整っていればコワーキングスペースの利用を限定する判断も必要です。さらに観光庁や地方自治体のワーケーション支援補助金を活用できる場合もありますので、事前に目的地の自治体情報を調べることをおすすめします。


まとめ

ワーケーション5年間の経験を振り返ると、最初に比べて失敗の種類が変わってきたことに気づきます。最初は「Wi-Fiがない」「充電できない」という基本的なトラブルに悩まされていましたが、今はより細かい「椅子の高さ」「照明の色温度」「遮音性」といった部分が気になるようになってきました。

これは失敗の経験が蓄積され、基本的な準備が習慣化された証拠だと自分では捉えています。どんな経験者でも最初は失敗します。大切なのはその失敗を次の宿選びと装備に反映させ続けることです。

今回の記事が、これからワーケーションを始めようとしている方の、最初の失敗を少しでも減らすヒントになれば幸いです。完璧な準備は存在しませんが、「備えた分だけ旅先での仕事は快適になる」という体験を、ぜひ自分自身で積み重ねてみてください。

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ワーケーション実施率の推移(出典: 観光庁「ワーケーション実態調査」)(観光庁「ワーケーション実態調査」)
出典: 観光庁「ワーケーション実態調査」
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この記事を書いた人

旅ガジェット番長・リョウ
旅ガジェット番長・リョウ

年間50回超えのフライトで空港を自分の庭と呼ぶトラベラー。「このスーツケース預け入れたら傷つくよ」と教えてくれる空港スタッフとは顔なじみ。旅先での楽しみより「次の旅で何グッズを試すか」を考えている時間の方が長い。荷物は常に機内持ち込みサイズ以内に収める主義。

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この記事を書いた人

年間50回超えのフライトで空港を自分の庭と呼ぶトラベラー。「このスーツケース預け入れたら傷つくよ」と教えてくれる空港スタッフとは顔なじみ。旅先での楽しみより「次の旅で何グッズを試すか」を考えている時間の方が長い。荷物は常に機内持ち込みサイズ以内に収める主義。

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